平易なれども安易にあらず

世の中は「簡単に~」とか「○○するだけで~」式のキャッチフレーズで溢れています。○○するだけで痩せる、塗るだけで肌が○○歳若返る、○○するだけで頭が良くなる、この程度のものであれば謳い文句どおりの効果がなくても笑って済ませられるかもしれませんが、この商品に出資するだけで数倍になって戻ってくると謳う投資詐欺、会員を集めるだけで必ず儲かると謳うねずみ講的商法の類はとても看過できるものではありません。

しかし、この手の詐欺的商法、つまり「ラクして儲かる話」というやつは、大昔から変わらぬ詐欺師たちの古典的伝統芸です。毎年、同じような手口で同じような犯罪が繰り返されています。そして、こういう古典的な儲け話にひっかかる被害者も新旧交代しながら尽きることがありません。

人々は「簡単に~」という言葉に強く惹かれるようです。もちろん、同じことをするのに難しいよりも簡単なほうが好ましいのは当然のことです。プログラミングの世界でもそうですが、なぜPythonが人気があるかといえばズバリ簡単だからです。導入が簡単・習得が簡単・(ソースコードを)読むのが簡単・ライブラリの導入が簡単・データ分析関連の環境構築が簡単・etc…といった具合で、他のプログラミング言語と比べたときに、多くの方面でなにかと簡単さというものが目立つのもPythonの特徴です。しかし、こういった簡単さは、Pythonに関わるプログラマやコミュニティが全力で努力し汗を流し、そして今も汗を流し続けている結果です。

コンピュータの世界は、いま既にある簡単さよりも、もっと簡単な方法がないかを追求しながら発展を続けてきました。WWW(ワールドワイドウェブ)が誕生したのは1990年。仕事から買い物から金融商品の売買まで、ブラウザ上で何でもできる今のような世界を、当時誰が想像したでしょうか。JavaScriptが登場した当初、それはHTMLを補助する従者に過ぎませんでしたが、現在ではどうでしょうか。ブログサービスもWebの世界を大きく変えました。ブログ登場以前は、自分のWebサイトを立ち上げて何か日記のようなものを書くというのはなかなかに面倒くさいことだったのです。

ノーフリーランチ。経済や金融の世界でおなじみの「タダ飯は食えない(タダ飯というものはない)」、つまり利益(インプット)を得るには、それに相応する何らかの支出(アウトプット)が必要であるというような意味の言葉です。コンピュータの世界も同じように、より簡単な世界を実現するためにたいへんな汗を流してきました。どのようなプログラミング言語でもそうですが、その言語のためのライブラリやフレームワークというものは、 最初からそこに用意されていたものではなく、簡便性と利便性のためにどこかの誰かが貴重な時間を注ぎ、労力を費やし、汗を流して作ってくれたものです。我々がコンピュータの世界で簡単さというランチにありつくことができるのは、汗と努力と時間という対価を誰かが支払ってくれたおかげです。またその逆に、我々も時間と労力と技術力を費やし、この世界に新しいランチを提供することができます。これはオープンソースソフトウェアの基本的な考え方でもあります。

簡単さの獲得は容易なことではありません。冒頭の詐欺商法の話に戻れば、打ち出の小槌のように出資金が2倍3倍になって返ってくるなどという簡単な話があるはずもなく、自転車操業で凌いだとしても破綻は目に見えています。誰も汗を流さないフリーランチを求めた代償として、詐欺師は法の裁きを受け、被害者は資産を失います。

学習においても似たことが言えると思います。技術の表面ばかりをなぞり、そこだけをわかった気になっていては、いざというときに応用が効きません。少し時間がかかったとしても、技術の深層にある普遍的な考え方を時間をかけて習得し自分のものにしておくことが、より進んだ分野の理解を簡単にするための大切な「支出」です。PGK江坂校では、平易であることを一番に心がけながらも、決して安易に陥らぬよう努めて参ります。

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